にんにくになら抱かれてもいいさ

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多くの歴史漫画の冒頭がマンモスと戦う原始人である理由

漫画と教科書の根本的な違い

 歴史学習まんがはいくつかの出版社から出されていますが、あるおもしろい共通点があります。

 それは、第一巻の冒頭が、氷河期に原始人がマンモスと戦っている描写であるということです。

 一方、一般的な歴史の教科書はより時代を遡り、猿人・原人・新人の話から歴史にアプローチします。

 学習まんがと謳う程ですから、「本」という正確性が求められる肩書上、教科書にリンクしていることが望ましいですが、なぜ、マンモスが登場するのでしょう。

ぶっちゃけ石器時代に何をやろうとどうでもいい

 世の中に、いかにマンモスと戦えばいいか悩んでいて、歴史に答えを求める人はいません。

 石を削って米を収穫したくて歴史に答えを求める人はいません。

 入試でもこの時代が出題されるのは稀です。

 すなわち、この時代で温故知新はできず、かつ需要がないということです。

 

 それでも、多くの人が読むであろう1巻の最初の最初に、この時代を描くのにはある理由があります。

食制度というアプローチ

 それは、国のあしあとを学ぶにあたって、原始人がしたことはすべての基礎となるからです。

 食の歴史を考えれば、マンモスの描写が何を暗示しているのかがわかります。

 

 国の歴史というのは、食料が不足することから始まります

 日本であれば、作物の栽培が始まり、人口の増加に米の収穫量が追いつかなくなり、人と人との闘いが始まる…これは弥生時代の頃の話。

 そして、強いものと弱いものが生まれる、すなわち戦争が起きます

 これが、万国共通の歴史の1つの型でもあります。

 

 ここでマルサスの「人口論」を例に上げます。

一人の食料に必要な面積比 米:小麦:草原=1:10:50

 というのも、米が主食の日本や中国はまだマシな方です。

 ヨーロッパは主食が麦、つまり、栽培の効率が米よりも悪いです。

 さらに、モンゴル高原など草原地帯なんかは作物は育たず、牛や羊の乳で飢えをしのいでおり、戦争が特に多かったです。(ヨーグルトがユーラシア大陸で広く食べられているのはこれが理由)

 

 マルサスは、人口増加に食料の供給が追いつかなくなるのが、戦争の原因だと結論付けました。

 逆に、食料過多、つまり中国の様になると、読書階級が生まれます

 米の生産性が高く、子供が農業を手伝う必要がなくなり、読書を始めるのです。

 読書階級が成長すると、彼らはよりよい米の栽培方法を生み出したり、あるいは、国の政治に関わったりするなど、好循環が始まります……

 という風に、食という目線で見ると、様々な歴史の出来事を解釈することが出来ます。

マンモスの描写が暗示すること

 それは、原始人と歴史上のすべての出来事に共通すること、つまり人間がみな持つ、3大欲求があるということ。

 つまり、どんな時代の人間も「食欲」と「性欲」に欲深いことを認知しておくと、歴史がたどる様々な争いや、出来事の理解が容易になるという理由から、原始人に学びを求めるのです。

 時代が古くなればなるほど、より魅力的になります。愛知万博のマンモスの展示が話題になりましたからね。

どんな史実も、「食欲」と「性欲」に基づいていることを、純粋な原始人のマンモス狩りで表現しているのでした。